名古屋城
金隣燦爛高甍に耀く (きんりんさんらんこうぼうにかがやく) 金燐燦爛耀高甍
今日登臨無限の情 (こんにちとうりんむげんのじょう) 今日登臨無限情
秀立雲を抜く天守閣 (しゅうりつくもをぬくてんしゅかく) 秀立抜雲天守閣
金湯不落の此の名城 (きんとうふらくのこのめいじょう) 金湯不落此名城
(下平声八庚韻)
《作者》 松口月城
《解説》 金のしゃちほこと天守閣とを誇る名城、名古屋城に登り、その壮麗さをたたえた詩。
作者が、昭和三十四年、復興なった名古屋城の天守閣に登り、その感激を詠じたものといわれる。
読み方 承句『登臨』は『とうりん』が正しい。
語釈 名古屋城 … 名古屋城は、徳川家康が西南諸大名に命じて慶長十四年(1609)。江戸幕府成立は1603)に着工し同十九年に完成した。
尾張徳川家の居城で、天守閣は加藤清正が造営したもの。閣上には金の鯱を飾ってある。第二次大戦中、昭和二十年戦火に見まわれ
本丸御殿の隙壁画などを除き、建物の大半を焼失したが、同三十四年に再建され、大天守ともに復元された。
金燐 … 金で作ったうろこ。 金に輝くしゃちほこ。 燦爛 … キラキラ光り輝くさま。 高甍 … 高いいらか。 名古屋の高い瓦屋根。
登臨 … 高いところに登って下を見渡すこと。 秀立 … きわだって抜きでている。
金湯 … 金城湯池(金で作った堅固な城と、湧きたつ湯をたたえて人の近寄れぬような池。堅固な構え)の略。 名城 … 秀れた城。
通訳 金のしゃちほこが高い瓦屋根の上で燦爛と輝いている名古屋城に、今日登って下界を見渡すと、なんとも言えない壮大な気分が胸中に湧き起こる。
天守閣はまるで雲を衝かんばかりに聳え立ち、堅固な構えを有する名古屋城は実にりっぱな城である。
鑑賞 名古屋城といえば昔から天下の名城として名高い。また金のしゃちほこで有名である。
そのため、この名古屋城は別名金鯱城・金城ともいわれる。作者が、この名城に登城してみて、その眺めの大きさに改めて驚き
感嘆したものであろう。 承句『今日登臨無限の情』は、その感激を端的に表現しているといってよい。
資料提供 山本義夫様
松口月城